1.ローンチカスタマーとしての貢献(開発への関与)
ローンチカスタマーとしてANAが貢献しました。
※ローンチカスタマー
航空機メーカーが新型航空機を開発する際に、開発後の購入を約束する最初の顧客や発注者のことです。この顧客の存在が新機種開発の「ローンチ(打ち上げ)」を可能にするため、この名で呼ばれます。
■ANA(全日本空輸)
ANAは787型機を世界で初めて発注した航空会社であり、開発段階からボーイング社と協力し、機体のコンセプトや仕様策定に深く関与しました。
・航空会社としての開発への意見提供
航空会社としての運航経験やニーズに基づき意見を提供し、「お客様にやさしい」「環境にやさしい」機体を目指すという787のコンセプト(長距離飛行能力を持つ中型機、高い燃費効率、快適な客室環境など)の実現に貢献しました。
・パイロットの派遣
開発初期段階から、ANAのパイロットや整備士がボーイング社に派遣され、設計・製造プロセスに携わり、機体の改善に貢献しました。
2.機体製造における機材、部品の供給元としての貢献(サプライチェーンの一端を担う)
ボーイング787の製造において、日本企業は非常に重要な役割を担っており、機体の約35%もの機材、部品を供給しています。
■三菱重工業(MHI)
主翼:787の主翼は、軽量な複合材料で作られており、空気抵抗を減らし燃費効率を高める重要な部品です。三菱重工業がこれを製造しています。
■川崎重工業(KHI)
前部胴体: 機首から主翼前縁までの胴体部分です。
中央翼: 主翼の中央部分で、胴体と主翼を結合する非常に重要な構造体です。
主脚格納部: 航空機の主脚(メインランディングギア)を格納する部分です。
与圧隔壁: 客室と後部の非与圧空間を隔てる壁です。
■SUBARU(旧 富士重工業)
中央翼の一部: 川崎重工業と分担して中央翼の一部を製造しています。
主脚格納部: 川崎重工業と同様に、この部分の製造も担当しています。
■新明和工業
主翼と胴体の一部: 主翼の前縁・後縁部や、胴体下部の構造材などを供給しています。
■東レ
機体構造に広く使われている炭素繊維複合材料を独占的に供給しています。CFRPは機体の大幅な軽量化を実現し、787の燃費効率の向上に大きく貢献しました。
※CFRP(炭素繊維強化プラスチック)
炭素繊維を樹脂(主にエポキシ樹脂)で固めた複合材料で、軽くて丈夫、そして高い剛性を持つことが最大の特徴です。鉄の約1/5の軽さで高い強度を持ち、耐腐食性や耐薬品性に優れ、疲労強度も高いといったメリットがあります。
これら主要な企業以外にも、多数の日本の中小企業が様々な部品や材料、製造設備などを供給しており、サプライチェーン全体で日本の技術力が活かされています。